どんぐり探訪記

ならのこチェアを作るにあたり、たくさんのことを学びました。
このページでは、“ならのこ”に関わって、知ったこと、思ったこと、触れたことを、 ご紹介していきたいと思います。
どうぞお楽しみに!

思い出をかたちに・・・

デザイン・設計担当:ならのこスタッフ 澤田 研二

漠然と思い出が浮かんでくるものがある。幼少期のころ、小学生のころ、二十歳のときのこと。良い思い出ばかりというわけではない。

部屋の片隅に気になるものがある。古く、色あせ、傷が付き、ガタついている。何度も直した跡がある。 特に大切にしているわけでもない。 思い入れが強いわけでもない。

なぜか愛着が湧くものがある。 決してデザインが良いわけではない。 手触りが良いわけではない。 使い心地が良いわけでもない。 高価なものでもない。 今は何かの役に立っているわけでもない。

「大切にする」ということを教えてくれるものがある。今までの多くの物語が浮かんでくる。新しい扉を開け、世界が広がる。心を豊かに満たし、落ち着いた気持ちになれる。

もし、私がデザイン、設計したものが、人にそのような何かのきっかけをつくることができるならば私は嬉しく思います。「ならのこチェア」の開発を行うにあたり、私個人の中では、このような想いに対して、どこまで近づくことができるのかをテーマにしました。「ならのこチェア」に触れあう多くの子供たちが、「大切なもの」を大事に思う心を育ててほしいと願っています。

“ならのこ”は何故ナラにこだわったのか

ならのこ事業部 田村 汎

ならのこチェアは西尾家具工芸社の原点である“こどもたちに良質を”をテーマにし、NARANOCOプロジェクトが開発を進めてきました。
設立50周年(平成15年9月24日)を迎えるにあたって、今一度原点に立ち戻ると同時に今後の西尾家具工芸社の方向性を示す指針となるものを打ち出そうと、NARANOCOプロジェクトを立ち上げました。

現社長は、創業時のカンナ屑や木屑の匂いのするホコリまみれの工場の片隅で幼児期を過ごし、子どもの頃から無垢の材料に囲まれ、自身も鉛筆(特にグリーンの三菱の鉛筆の香り)が好きで、よく削っては香りを嗅ぐのでいつも鼻の下が真っ黒けだったそうです。小学校に入ってからも、使っている机や椅子はみんな無垢のものだったそうです。

現在の大量生産による工業製品には何か欠けているのではないか、何か一緒に失ったものがあるのではないか、そのことをカタチに託してみようと試みたものがNARANOCOチェア(はじまりのいす)です。

無垢の木の家具たちと共に時間を過ごしたことによって、気づかされた天然素材のやさしい表情や香り。日々の暮らしの中で、木の命が繰り返し私たちの心に語りかけ、モノを愛おしむ感情を育んでくれた原体験。少年時代のあの時に味わった感動と記憶をより多くの方々へ提供できる会社へ、私たちの西尾家具工芸社を確実に仕上げていきたいと考えています。

NARANOCOプロジェクトでは9つのキーワード「天然素材」「環境配慮」「親子支援」「過程重視」「物語生成」「盟友感覚」「自発喚起」「記憶造形」「関係育成」を元に検討し、特に主な材料となる本体の材料に「天然素材」を考え、最終的に西尾家具工芸社の原点であるナラ材に決定しました。

西尾家具工芸社創業当時は、現在と違ってまだまだ自然が残されており、環境破壊も少なく木材は豊富にあり、当社でも昭和50年頃までは、工場や倉庫にナラ材が天然乾燥のため何十石も山積みされており、使用材料はほとんどナラ材を使用しておりました。
ナラ材は非常に硬く木目が大変美しく、子どもたちが使用したり触れたりする学校用家具の材料には最適だったのです。

この様に、“9つのキーワード”“西尾家具工芸社の歴史”“無垢材の温かみ”“非常に堅牢で美しい”全ての観点から“ならのこチェア”はナラ材でしかありえないのです。

西尾家具 ならのこプロジェクト こどもたちに良質を