ものづくりのこころ 4 SPIRIT OF THE MAKING 4
2000年 新型調理台「WKS-1」の誕生
すべての子どもたちに木のぬくもりにふれてもらいたい強い想いとアイデアが生んだ新型生徒用調理台「WKS-1」
WKS-1の開発ストーリー
それはプロジェクトメンバーをはじめ協力していただいた方々の想いが一つになった物語でした。
新型調理台開発の中心となった「ならのこプロジェクト」のメンバーに製品への想いを語ってもらいました。
新型調理台「WKS-1」について教えてください。
住友部長
昨今、問題となっているCO2の削減という意味では、日本の森林の活性化が非常に取り上げられています。当社も以前から環境に対して取り組んでいますが、その日本の森林を活性化させるためにも、間伐材を使用することが私たちの取り組みに最適ではないかと思いました。
材料の産地をあたり社内で議論したなかで、ニシオの得意とする調理台で間伐材を使用することができないかということからこのWKS-1が完成しました。
須田主任
ナラの木で作った調理台という原点に立ち返るという意味から、無垢の材料(加工していない木材)を使った調理台を検討し、材料の吟味から始めました。現在の学校施設の調理台の天板と言えばステンレスがかぶってあり、本体は白系統の合成合板でできているのが大半ですが、そのような概念をすて、本来のニシオの原点にかえり提案できればということから、ヒノキを圧縮した木材にたどり着いたのです。
田村常務
環境への配慮ということを第一に考えた場合、今回は無垢材でもヒノキの無垢材ということでした。従来は耐久性などからステンレスというのが一般的な調理台ですが、あたたかさ、ぬくもり、環境への配慮ということからも木材のほうがいいと思いました。
当社も10年ほど前から環境問題に取組んでいます。ニシオのバイブル「ならのこ」の精神を取り込んだ製品がこの調理台です。
この調理台だからこその魅力とは?無垢材だからこその良さとは?
広瀬主任
本体の存在感、見て触ってみると「やっぱりこれが本来なんだな」という感じを受け取ってもらえると思います。「こういう機能がついてすごいんです」「こういう器具がついてこういうことができるんです」ではなく、天然の木材を使ったことに大きな意味があると思っています。 使っている材料やデザインもそうですが、全体の雰囲気に力があるからこそ、しっかりとした存在感があるのではないでしょうか。
須田主任
先ほどから私も手のひらを触れていますが、常に実習授業を受けている間も木に触れながら授業を受けている子どもの心と、加工品のステンレスなどに触れているのでは心の安定感も違うと思います。
丸みをもったやわらかい感じは人をやわらかくする、そして木のぬくもりを感じながら、使っている人の心もおだやかにする魅力をもった調理台だと思います。
「WKS-1」という製品に織り込まれたメッセージは何ですか?
広瀬主任
当社の企業の根底にある「子どもたちに良質を」というように、日本を背負って立つ子どもたちに本物の木に触れて大きくなってもらいたい。そのためにも、学校で実際にふれてもらうことが一番うれしく思います。
自分で手を加えて大事に長く使ってもらえる調理台ということで、本物にふれてもらい、大事に長く使う。キズがついたから、へこんだからといって新しいものに買いかえるのではなく、ひとつのものを大事に長く使ってもらえるようにと思っています。それだけのものを我々も提供しているつもりです。
住友部長
学校や公共施設の中でも、間伐材を含めた木材への需要は多くなってきています。環境への配慮はもちろんのこと、木材の良さでもあるあたたかさ、人に対するやさしさを、当社の製品にもっと取り込んで、これからも世の中に広めていきたいと思っています。
須田主任
本物に触れながら授業を受けて、本物に触れながら食事をする。ものづくりとして、一番底から支えていくことができればうれしいと思っています。
これからの西尾家具工芸社、環境問題に対してどのように取組んでいきますか?
田村常務
環境問題への取り組みは、10年ほど前に学習・住環境の問題であるシックハウスへの対策のため、ホルムアルデヒドに代表されるVOC(揮発性有機化合物)を削減することから始まりました。
次に、社会環境への貢献のため、廃棄物対策として家具の主材を『ニシオECOボード』(マテリアルリサイクル可能なパーティクルボード)に転換しました。これにより、自然環境への負荷を低減し、循環型社会の形成に向けて努力しています。
そして今、地球環境の問題である温暖化対策への取り組みとして、京都議定書に定められた温室効果ガス削減目標-6%の内、3.9%を森林吸収により削減するために行われている『木づかい運動』(林野庁推奨)に積極的に参加、そのシンボルマークである『サンキューグリーンスタイルマーク』をカタログなどで使用することにより、この運動の普及活動にも取り組んでいます。他にも環境ジャーナリストの枝廣淳子先生が主宰する『日刊 温暖化新聞』に企業パートナーとしても参画しています。
これまでも『ニシオNEOボード』(国産材比率53%のMDF)を採用するなど、国産材の活用の取り組みをしてきました。そして今回、新たに開発した新型調理台『WKS-1』をきっかけとして、当社の原点でもある無垢の木材を使用した家具の良さをお客様やエンドユーザーである子どもたちに知っていただきたいと思います。
これからも積極的に国産木材を活用した製品開発に取り組むことにより、様々な環境問題に配慮した、より良い教育施設用家具を提供していきたいと思います。
この調理台を囲んで、自然とみんなが『笑顔』になってくれればうれしいです
新型調理台の開発にあたり材料を提供していただいた企業担当者にもお話を伺いました。
キーワードは「間伐と環境」です。
本体の材料として、台形集成材を提供していただいた企業のご担当者より
間伐の目的は森に日を入れることです。山の中で木がもみ合いにならず、育ちやすい環境にすることが大切になってきます。一番の目的は木を大きくすることですが、治山治水のことを考えれば、下層植物が生えてくることも間伐の利点になります。
下草が生えてこなければ、雨が降ると水がすぐに流れ出して川に押し寄せます。それが、洪水やダムの決壊を招く原因となるのです。また、水がすぐに流れてしまうということは、山に対して保水力が無い証拠にもなります。よく「緑のダム」と言われますが、荒れた森ではその機能を果たしていないのです。
間伐することで日が当たり、下層植物が生え山に保水力ができます。また、山が崩れたり土が流れたりすることも防げます。山を守るために、川を守るために、大きく言えば地球を守るためにも、間伐というのは必要ではないでしょうか。
圧縮材の天板、側パネルの加工、塗装および中棚の加工、塗装をしていただいた企業のご担当者より
現在、日本では年間1億立米の木材使用量があります。そのうちの約5分の1(1,700万-1,800万立米)が日本国産材の使用量で、あとは全て輸入材になります。1,700万-1,800万立米というのは、日本の山の総備蓄量の成長量にも満たない量しか消費されていません。木はあるのに使えないことから、使わないのです。
なぜ間伐をして森を守り、活性化させないといけないのかというと、適度な間伐をしてあげることで、森に光が入り雑木や草が生えてきます。木々も光合成をすることで大きくなります。そうすることで、本来は健全な森林の体系となるのですが、現状ではそれが出来ていないのです。山はさわっても利益にならないという考えになってしまい、悪循環だけが残っています。
間伐材だから細い変形したものという感覚はありません。年数が経過することによる大きな木ですから、十分に使えるのです。
新型調理台「WKS-1」開発チームより
環境社会への貢献を、ものづくりを通して伝えたい想いがありました。材料を提供していただいた企業の方々も、それぞれの立場から環境への取り組みに対して、日々大変な努力をされています。
現在、環境問題への取り組みは地球規模で急務とされています。西尾家具工芸社として、「これまでしてきたこと」「今やるべきこと」「これからできること」を常に考え、ものづくりの企業として、これから先も環境社会に貢献できる存在でありたいと思っています。
そして近い将来、この地球を支える多くの子どもたちに、本当の木のぬくもりにふれながら成長してもらいたいと願っています。
ニシオの環境に対する想いを共有できる瞬間がここにはありました